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トウガラシ,ピーマン,パプリカについて

[caption id="attachment_868" align="alignnone" width="297"]トウガラシ トウガラシ[/caption]

山本紀夫著 トウガラシの世界史 辛くて熱い「食卓革命」 中公新書という本があります.この本では植物学と民俗学の専門家がトウガラシの貴重性を様々角度からみています.

ピーマン,パプリカは形から察せられる様にトウガラシの仲間です.人類が辛くないトウガラシを開発してできたものです.子供に人気の無い野菜の代表でもあるピーマン,パプリカが開発されたのはなぜでしょうか?

まずはトウガラシから見ていきます.トウガラシはコロンブスアメリカ大陸(実はカリブ海西インド諸島)がきっかけでヨーロッパに広まります.

黄金を夢見てアメリカ発見に至ったのですが,黄金は見つからず,その代わりキャッサバ,ヒョウタン,タバコ,トウモロコシ,サツマイモ,トウガラシ,ワタ,カボチャを持ち帰りました.今では黄金以上の価値を持ち帰った訳ですが,当時はただ珍しく価値がありそうという程度だったと思います.

トウガラシについてはコロンブス自身が「アヒー」という現地名でコショウに代わる可能性のある香辛料として報告しています.

コロンブスアメリカを発見する頃,アヒー(トウガラシ)はすでに西インド諸島,中米,アンデスでも利用されていたとのこと.考古学的証拠としてはペルー中部で紀元前8000-7500の遺跡で見つかっています.

さて,日本とトウガラシの関係に移ります.トウガラシがヨーロッパに伝わり,わずか50年後にポルトガル人によって日本に1542年または1552年に伝わったという説があります.あるいは秀吉の朝鮮出兵時に入ってきたという説もあります.

いずれにしても安土桃山時代には伝来し江戸時代には盛んに利用されていました.

[caption id="attachment_869" align="alignnone" width="300"]トウガラシの花 トウガラシの花[/caption]

トウガラシデータ

科:ナス科 Solanaceae 属:トウガラシ属 Capsicum 種:トウガラシ C. annuum 学名:Capsicum annuum L. 和名:トウガラシ、唐辛子、蕃椒 英名:chile pepper, sweet pepper

開花:7-9月ごろに白い花 特徴:上向きに緑色で内部に空洞のある細長い5cmほどの実がなる(トウガラシ).果実は熟すると赤くなる.色づくと黄色や紫色になるものもある.辛味成分カプサイシンは種子の付く胎座に最も多く含まれる.

トウガラシが新大陸で発見されてから急速に世界に広まったのは当時ものすごく利用価値が高かったからだと考えられます.

香辛料の代表であるコショウが大航海時代の動機となったくらいですから,ビタミンCが豊富に含まれている香辛料は画期的だったと考えられます.また,ビタミンE, A, Kも含有量が多くビタミンのカタマリとも言えます.

トウガラシは辛いので香辛料としては最適ですが,ビタミン補給源としては大量に食べ難いという欠点があるので,これが辛くないトウガラシの開発へつながります.次回はピーマン,パプリカに焦点を当てます.

以上内容の参考文献は冒頭に紹介した,山本紀夫著「トウガラシの世界史」です.トウガラシに造詣の深い著者がトウガラシについて深い内容を紹介している本です.

今日はこれまで.ではまた.