誰でも知っているビタミンですが,解説の依頼があったので見ていきます.依頼者はビタミンが物質名(薬品名)ではなく,生命体に有効な機能名であることを知り,ビタミンについてもっと知りたいとの事でした.
生物は栄養素を取り入れて生命を維持・成長しています.栄養素には以下の三大栄養素があります.
- 蛋白質
- 脂肪
- 炭水化物
これ以外に微量ですが必要な栄養素があります.そのうち無機物をミネラル(mineral),有機物をビタミン(vitamin)と呼んでいます.
必要な栄養素は生物ごとに違います.人にとっては大切な栄養素でも,植物にとっては栄養とならないものがあります.生命維持,成長の仕組みが違う場合や外部から取り入れなくても自分が合成できれば必要は無くなります.
人にとってビタミンは13種類あります.約50年前にほとんど出そろいました.その後の研究は続いていますが,なかなか新しいビタミンは見つかりません.
水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン
ビタミンを大きく分けると水溶性と脂溶性があります.水溶性というのは水に溶けるということ.脂溶性というのは脂に溶けるという事です.
そして水と脂(油)は混ざらないという事は知っていると思います.また,身体の大部分が水分であるという事も知っていると思います.でも,身体が全て水溶性だとしたら,身体は水に溶けてしまいます.つまり,お風呂に入ると溶けてしまいます.そんなことはありません.身体の構成要素には水に溶けない部分があります.
脂溶性ビタミン
ここで,もう少し考えて見ましょう.身体の中のどの部分に脂があるのかを考えます.すると脂溶性ビタミンがどこでどんな働きをしているのかに興味が湧きませんか?脂溶性ビタミンはA, D, E, Kの4種類です.
ビタミンA
A1(レチノール, レチナール, レチノイン酸) A2(A1の3-デヒドロ体)
成長,生殖機能維持,上皮細胞の正常化に関係します. 視覚に関与します.
ビタミンD
D2(エルゴカルシフェロール) D3(コレカルシフェロール)
腸管からのカルシウムとリンの吸収を促進し,骨の再構築を調整します.
ビタミンE
トコフェロール (αトコフェロール,βトコフェロール,γトコフェロール,δトコフェロール) トコトリエノール
脂質の連鎖的酸化を阻止します(抗酸化物質). 作用後のビタミンEはビタミンCで再生されます. 結果として,細胞を柔軟化し,筋肉の緊張を和らげ,末端の血液循環を良くします.
ビタミンK
K1(フィロキノン) K2(メナキノン) K3(メナジオン)
タンパク質の活性化に必須で,動物体内で血液の凝固や組織の石灰化に関わっています.
水溶性ビタミン
水溶性で炭水化物をエネルギーに変える役割をもつビタミンをBとしましたのでBの種類が多いです.一般的に生命体の化学反応多くが水溶液の中で起こっています.このことは重要な事実です.
さて,ビタミンはBは8種類あります.ビタミンCと合わせて9種類の水溶性ビタミンを見てみましょう.
ビタミンB1
ビタミンB2 (ビタミンG)
三大栄養素の補酵素として働きます. 脂質の代謝に関わります. 皮脂の分泌を調節する作用があります.
ビタミンB3 (ビタミンPP)
循環系,消化系,神経系の働きを促進します.
ビタミンB5
脂質の代謝に不可欠です. タンパク質と炭水化物の代謝を促進します.
ビタミンB6
ピリドキサール ピリドキサミン ピリドキシン
タンパク質がアミノ酸に分解する過程にかかわる補酵素です. ヘモグロビンの合成に必要な酵素の補酵素です. 細胞の新陳代謝を促進します.
ビタミンB7(ビタミンBw,ビタミンH)
ビオチン
アミノ酸や脂肪酸の代謝に関与しています. 腸内細菌によってつくることができます.
ビタミンB9(ビタミンBc,ビタミンM)
DNAの生合成に必要です. 欠乏すると多量のDNAを必要とする,細胞分裂の盛んな造血器官等の機能に影響を与えます.
ビタミンB12
赤色の物質です.ビタミンB9を再生させます. DNA合成と調整をします. 脂肪酸の合成とエネルギー生産に関与しています.
ビタミンC
抗酸化作用が様々な用途で働きます. 酸化されたビタミンEを元に戻します. コラーゲンの生成を促進します.
以上が各ビタミンの物質名と作用です.一つのビタミン名にいくつもの物質があることがおわかりになりましたでしょうか?実際は中間の生成物などの類似の物質がわずかに作用しているものなどを加えるともっとビタミン物質があるのですが,省略しました.
今日はこれまで.ではまた.