山河海空

自然から日常生活まで,独自の視点でみていきます.

日本人が最もお世話になっている植物 イネ

誰もが食べるお米はイネの実です.イネはヒエやアワと同じイネ科の植物なのに,なぜ水田で育てるのでしょうか?畑で育つ陸稲というのもありますが,あまり見かけません.今日はイネのお話です.

水稲陸稲

水田で栽培するイネを水稲(すいとう),畑で栽培するイネを陸稲(りくとう,おかぼ)と言います.現在はほとんどが水稲の米を食べています.理由は以下の通りです.

水稲の利点

  1. 水稲の方がおいしい
  2. 陸稲は連作障害があるが,水稲は無い
  3. 水田自体が水による雑草対策になっている

水稲の欠点

  1. 水量,水位の調節技術が必要(立地が限られる)
  2. 水不足と水害に弱い

現代では味が第一の条件になっているので,水稲がほとんどです.また,水田自体が水に満たされていて雑草対策になっている点も水稲優勢の要因でした.

一方,陸稲の方は,山間部など耕地が限られていたり,大量の水が確保できないと陸稲しか選択肢がありませんでした.雑草の草むしりが大変な上,収穫量が少なく,連作すると発育障害が発生します.日照りや,水害は比較的影響を受けにくい利点もあります.

水稲陸稲のどちらも植物学的には同一ですが,品種改良で現在に至りました.

品種改良

本来,イネは人に食べてもらうものでは無く,植物として種が環境に適合して繁栄していくものですが,イネは人間が人為的に選択して特定の品種を育ててきました.

食物としての米として便利な特性を引き出してきたのですが,以下の様な特徴があります.

  1. 実である米が人間にとって美味しい
  2. 実が同時熟し,収穫まで落ちにくい
  3. 水稲として水位や水質,水温に適合できる
  4. 日本の気候に適合できる
  5. 病害に強い
  6. 自家受粉で交雑しにくい

1,2は人間の都合で申し訳ないのですが,米となる実が美味しく,かつ同時に同じ大きさに育ってくれないと困るし,実ができてから,すぐに散ってしまうと収穫できないくなるので,そういう品種を選別して育ててきました.

3,4は日本の国土は南北に長く,気候が違うので,それぞれの土地の気候に適合する必要があります.

5,6はそもそも進化の過程で多様性が生物の生き残り戦略なのに,特定の品種だけを純粋栽培すると,病気で全滅する危険があります.

品種を安定させるために,自家受粉させ,交雑させないのは不自然でもあります.我々人間にとって利用価値が高い品種を作るということは,自然の流れに反することになりますが,品種改良の宿命でもあります.

とは言え,毎日たべるコシヒカリにはお世話になっています.

イネのデータ

目:イネ目 Poales 科:イネ科 Poaceae 亜科:イネ亜科 Oryzoideae 属:イネ属 Oryza 種:イネ O. sativa 学名:Oryza sativa 和名:イネ(アジアイネ) 英名:Rice 花:頴花(えいか)と呼ばれます.外観は緑色をした籾(もみ)の形です. 葉:多くの節をもつ管状の稈を多数分岐させ,節ごとに1枚の細長い肉薄の葉があります.葉は筋状の葉脈にあるガラス体(プラントオパール)の柱(植物骨格組織)を支えにして直立しています.

原産地:中国南部の長江下流域または東南アジア,中国長江流域で約1万2千年前に栽培されています. おまけ:「たんぼ」って田圃と書きます.最近まで知りませんでした.

今日はこれまで.ではまた.