先週はコーヒーの「美味しさ」や香りの素となるアロマについてお話しましたが,コーヒーと言えばカフェインがもう一つの主役です.今日はカフェインのお話です.
カフェインと言えば「眠気覚まし」の効果があり,一杯で気分がシャキとし,眠気が覚めるイメージがあります.
ところが,私も私の家族もコーヒーを飲んで数分もしないうちにウトウトし始めます.カフェインが全然効かないどころか,コーヒーのアロマが眠気を誘うのです.完全リラックスモードに入ってしまいます.人によりカフェインへの耐性が違う様です.
カフェインとは
カフェインには様々な作用があります.まずはその作用について見ていきましょう.
1. 興奮作用,覚醒作用
カフェインは精神刺激薬として中枢神経系の活動を増加させます.
脳内に睡眠物質であるアデノシンが増えることで睡眠中枢を刺激し,眠気が起こります.ところが,カフェインはアデノシンに構造が似ているので,この作用を阻害します.
また,メラトニンという,体温,血圧,脈拍を下げ,眠りを誘うホルモンがありますが,この分泌を減少させる効果もあります.
同時に脳の代謝を高め,脳の活動を活性化させます.これにより,すっきりとした感じがします。
上記の相乗作用によって眠気を妨げ,覚醒作用を引き起こします.
2. 解熱鎮痛作用
医薬品として総合感冒薬や鎮痛薬に用いられています.カフェインを摂取すると,脳血管が収縮することにより頭痛が軽減されます.
3. その他の作用
その他の作用として,強心作用,骨格筋の活性化,皮下脂肪燃焼作用,利尿作用などがあります.
心筋に直接作用して,収縮増加,拍数増加,拍出量増大をおこします.これらを強心作用と言います.
また,骨格筋に直接作用して,筋肉の収縮を増強します.これにより疲労の軽減,活動性増大が起こります.また,脂肪酸増加作用による呼吸量と熱発生作用による皮下脂肪燃焼効果があります.
一方,腎臓の血管を拡張する働きもあります.腎臓の血流量が増すことで尿の生成が増加します.これを利尿作用と呼びます.
毒なのか薬なのか
毒と薬は紙一重です.分量によって毒にもなれば薬にもなります.コーヒーを通常に飲むのであれば,優れた薬効のある飲み物だと言えます.これは紅茶や緑茶も同様です.
ところが,過剰摂取すると中毒症状が現れます.中毒症状とは,焦燥感,神経過敏,興奮,不眠,顔面紅潮,悪心,頻尿,頻脈などの症状です.
これは個人差がありますが,カフェイン250mg程度から起こる可能性が高まります.コーヒーカップ一杯で50-100㎎のカフェインが入っていますので,2-3杯が限度という事になります.
また,3時間以内に17㎎/kg(850㎎:体重50kg)以上だとほぼ全員が急性中毒症になります.
紅茶や緑茶,ココアなどもカフェインが入っていますので,2-3杯以上は危険と覚えておいて下さい.ファミレスなどのお替り自由でも自由に飲まない様に.数杯飲んでいるとほとんどの人がもう飲めない気分になると思いますが,軽い兆候が出ていると思ってください.
カフェインの吸収と半減期
カフェインを摂取すると,一部は胃から,大部分は小腸から吸収されます.約45分後で99%が吸収されます.
カフェインを摂取後,2-3時間で血液中の濃度が最大になります.血液中のカフェインの濃度が半分までに減る時間(半減期)は2.5-4.5時間です.
カフェインのデータ
和名:カフェイン 英名:CAFFEINE 分子式:C8H10N4O2 プリン環を持ったキサンチンの誘導体(アルカロイドの1種)
異名: (IUPAC)3, 7-dihydro-1, 3, 7-trimethyl-1 H-purine-2, 6-dione (プリン環から見た国際命名法による名付け方です)
1, 3, 7-trimethylxanthine (プリン環の1, 3, 7 にメチル基が付いたキサンチンの意味です)
1, 3, 7-trimethyl-2, 6-dioxopurine (キサンチンをプリン塩基とし,2, 6-dioxopurineとします)
methyltheobromine (メチル基2つをもつメチルキサンチン(=テオブロミン)がメチル化されたの意味です) 注:プリンについては後日取り上げます.
モル質量:194.19 g/mol 昇華点:178℃ 融点:234-236.5℃ 密度:1.23 g/cm3 水への溶解度:2.17 g/100 ml
物理的状態,外観: 無臭,白色の結晶または結晶性粉末 短期暴露の影響: 中枢神経系,心血管系に影響を与え,不眠,興奮,頻脈,多尿を生じることがあります.
今日はこれまで.ではまた.