柿には渋柿と甘柿があります.渋柿には果肉の部分に渋みがあり,この渋みはタンニンからきています.タンニンには水溶性と不溶性があり,渋柿は水溶性で,甘柿は不溶性のタンニンが多く含まれています.
柿のタンニン(tannin)と干し柿
渋柿の渋味の原因であるタンニンとは,(基本的には)植物由来の水溶性化合物で,たんぱく質,アルカロイド,金属イオンと反応し,塩を形成する物質の総称です.
渋柿には渋味が特に強力なカキタンニンが1-2%含まれています.これは,カテキン類の①エピカテキン,②カテキンガレート,③エピガロカテキン,④ガロカテキンガレートが①:②:③:④=1:1:2:2の比率で,12–30分子縮合した分子量15,000程度の縮合型タンニンです.
少し難しくなりましたが,要するにタンニンは複雑な高分子で,他のものと反応しやすい性質があります.
このタンニンが口に入ると,タンパク質と結合する性質から口の中の粘膜(タンパク質)が変性してしまいます.これを「収れん作用」と呼びますが,これが渋味の正体です.従って渋味は口の中のタンパク質の収れんよって起こされる「痛み」に近い感覚なのです.
この高分子であるタンニンが更に重合してもっと大きな分子になると水に溶けにくくなります(不溶性).重合度を増やすことで不溶性になると口の中での収れん作用は無くなりますので,渋味は消えます.渋柿柿を干すと甘くなるのはこの原理によるものです.
ちなみに,お茶,赤ワイン,未熟のバナナなどの渋味もタンニンによるものです.
甘柿の秘密
渋柿の渋味は水溶性タンニンが原因とわかりました.柿は本来渋柿が普通で,熟す過程でタンニンが変性し,渋味が変わり,甘いものを甘柿と呼んでいます. 甘柿は渋柿の突然変異でできたものです.甘柿も未熟時には渋味がありますが,熟すに従い渋味が抜けて,甘味が強くなっていきます.
甘柿の種類の中には熟した後でも少し渋味が残っているものがあります.これらを「不完全甘柿」と呼んでいます.
柿の種類と品種
柿の品種は1,000を超えています.甘柿同士を交配しても渋柿となる場合もあります.
甘柿(熟すと甘い):
富有(岐阜県瑞穂市居倉が発祥) 次郎(静岡県森町の松本次郎吉由来) 御所(奈良県御所市が発祥,古い完全甘柿) 太秋(たいしゅう) 愛秋豊 伊豆 早秋 貴秋 晩御所 花御所 天神御所,など
不完全甘柿(熟すと甘いが,渋味も残る):
禅寺丸(1214年見つかった日本初の甘柿) 筆柿(愛知県が発祥) 西村早生(にしむらわせ) 黒柿,など
渋柿(熟しても渋い):
平核無(ひらたねなし,新潟県が発祥,=八珍柿) 刀根早生(とねわせ,奈良県天理市の刀根淑民の農園の平核無が1959年突全変異) 甲州百目(こうしゅうひゃくめ) 蜂屋 富士 江戸柿 西条柿 市田柿 四つ溝(溝柿) 会津身知らず 堂上蜂屋柿 愛宕柿,など
渋柿の渋抜き技術
渋柿が標準なので,渋抜きの技術は重要です.湯やアルコールで渋を抜くことを醂(さわ)すといいます.酒ヘンに林で見かけなしあまり使われない漢字ですね.醂された柿は「さわし柿」と呼ばれます.渋抜きはタンニンの種類(品種)毎に違いますので,様々な方法があります.
渋抜き方法
樽柿,35度のアルコーを(20-30kgに湯飲み1杯程度)かけ,容器に密封して1週間置きます.
湯抜き,35-45℃の湯に浸けます.
米・米ぬか漬け法
炭酸ガス脱渋法(大量の渋柿を加工です)
容器にりんごと一緒に入れ密封して一週間置く方法
などいろいろな方法があります.
カキのデータ
目:ツツジ目 Ericales 科:カキノキ科 Ebenaceae 属:カキノキ属 Diospyros 種:カキノキ D. kaki 学名:Diospyros kaki Thunb. 和名:カキノキ 英名:Kaki Persimmon Persimmon
花:5-6月開花,雌雄同株で黄白色の雌花が咲きます.柱頭が4つに分かれた雌しべ,その周辺に痕跡的な雄しべがあります.雄花は集まって咲き,大きさは雌花よりも小さいです. 葉:落葉樹 実:9-12月頃実がなる.「桃栗三年柿八年」と言われますが,接ぎ木すると4年程度で結実します. 高さ:2-5m 原産地:中国 生育条件:温暖な地域(渋柿は寒冷地) 分布:沖縄県を除く日本の全都道府県で栽培,中国,韓国,ブラジル,イタリア,イスラエルなどで栽培.
参考:果物ナビ https://www.kudamononavi.com/zukan/persimmon.htm
今日はこれまで.ではまた.