今,読んでいる本の中で,後まで心に残りそうな部分を紹介します. 書名:アドラー心理学を深く知る29のキーワード 著者:梶野真 出版社:祥伝社
良書です. 本書は,ここ数年日本でも人気を集めてきたアドラー心理学に関する本です.アドラーについては何冊か読みましたが,まだ原書を読んだことが無いので,いつか読む機会が来るときの予備知識として読み始めました.
第一編 「自分とはなにか」
日常生活でよく起きる問題を掘り下げていくことで,自分についての理解が深まります.アドラーの観察力と推察力,解釈が著者の経験など具体例を通して説明されています.
第二編 「3つのライフタスク」
自分とは何かを解釈すると,次は自分はどこに行くのか,何をするのか?など,自分の目的が何なのかが課題となります. これについて,仕事のタスク,交友のタスク,愛のタスクとして具体的に説明されています.
本書の最後に近い263ページにアドラーからの引用「私は自分の心理学をシンプルにするために40年という年月を要した.よりシンプルにするのであれば”すべての神経症は,虚栄心にある”という必要があるかも知れない.しかし,それさえも理解されない可能性があるだろう」とあります.
この直接的な意味は262ページをみればわかりますが,深い観察,洞察,解釈で一見複雑で関連のなさそうな現象を深く考えてシンプルにしていく手法がわかります.
本書を読んでいて思いつくのが,子供たちが公園で遊んでいる姿です.公園には様々な遊具があり,子供たちは思いつきで目の前の遊具で遊びます.それを見守る大人の目はもう少し俯瞰的で,公園内の遊具の位置や危険度,一緒に遊んでいる友達の動き,あるいは買い物や夕飯の支度などについて考えているかも知れません.
人生の様々な遊具に夢中になっている子供たちにとってみれば,その瞬間が全てで,遊具の取り合いから始まる喧嘩や意地悪されたことなどは記憶として刻まれていきます.
俯瞰できる大人の目から見れば他愛ないことですが,子供にしてみれば成長して克服できるまで多くの経験と時間が必要になります.
アドラーの視点は,自分や生き方を俯瞰できる大人の視点のように思えました.
アドラーのデータ
Alfred Adler(1870-1937) オーストリア出身の精神科医で心理学者,社会理論家です.ジークムント・フロイトやカール・グスタフ・ユングと並んで現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立しました.
ウィーンの郊外のルドルフスハイムに,ハンガリー系ユダヤ人の父とチェコスロヴァキア系ユダヤ人の母との間に生まれました.父親は穀物商を営んでおり,中産階級に属していました.6人兄弟の次男で大家族の中で育った環境が独自の理論を発展させる基盤になりました.
1916年,第一次世界大戦で軍医として従軍した経験はのちの共同体感覚の重要性に気がつきました.
1935年,世界大恐慌以降にオーストリアの政治が不安定になった来ましたので,アメリカに移住しました.アメリカではロングアイランド医科大学の医学心理学招聘教授職として,また大学付属の教育診療所の指導もおこないました.
今日はこれまで.ではまた.