昨日のブログは,「縄文の汗臭い香りが漂っていました」で終わりました.ところで,ニオイセンサーというセンサーがあります.空気清浄機やニオイ感知器に入っていてニオイを検出するセンサーです.今日はニオイセンサーについてみていきます.
最近のセンサーは高度なモノなのにずいぶん低価格化されてきました.これは半導体技術の成果です.身近にあるスマートフォーンや自動車,ロボットなどには光センサー,温度センサー,磁気センサー,加速度センサー,振動センサー,音センサ-など様々なセンサーが組み合わされています.
基本的にセンサーは何かの物理的な刺激をそれに敏感な素材や構造体を使い電流や電気抵抗として電子的に感知し,電流や電気抵抗をアナログのままあるいはデジタル化して処理されます.
最終的に電気信号に変換してやることで電子機器の一部として利用しやすくなります.
ところで,ちょっとわかりにくいのがニオイセンサーです.どのようにしてニオイを電気信号に変えるのでしょうか?順番に見ていきましょう.
ニオイとは
まず,ニオイとは何でしょうか?鼻が何かのニオイを感知すると脳が記憶と感情で何のニオイか思い出します.この鼻にあるセンサーを刺激するものがニオイのもとなのです.これは空気中にただ漂う分子です.
ニオイを出す発生源から出て来た分子が鼻の中鼻腔の上部(脳の下)にある嗅上皮と呼ばれる粘膜に溶け込みます.ここには嗅毛と呼ばれる一種の毛が生えていますがここに約400種類の嗅覚受容体というニオイを感知する仕組みがあります.400種類それぞれが特定の分子に反応するので,400種類のニオイが感知できます.これが脳によって処理されニオイとして記憶されます.
実際は400種類の組み合わせになりますので,数十万種類の区別ができる可能性を持っています.
ニオイは直接人の本能に作用します.理屈抜きに好き嫌いができてしまいます.また,あるにおいで昔のことを思い出したします.数年前のことですが,少年の頃夏休み毎年行って暮らした田舎へ数十年ぶりに行ったら,当時嗅いでいた畑のニオイやトマトのニオイに刺激されて当時の出来事をありありと思い出しました.
さて,ニオイセンサーに戻ります.
ニオイセンサーの種類と仕組み
ニオイセンサーの方式として以下の4種類があります. 1. 半導体式 2. 水晶振動子式 3. FETバイオセンサー 4. 膜型表面応力センサー
1.以外の方式は技術的に高度で扱い易さや価格面を考えると現状では特別な用途か将来的なものとなりますので,省略します.一般に数千円以下のニオイ測定器や空気清浄器のセンサーは1.半導体式が一般的です.
半導体式ニオイセンサー
半導体の表面にニオイの分子が吸着すると表面反応が起きて抵抗値が低くなります.この抵抗値変化を測定することでニオイの量を求めます.
酸化物半導体式と有機半導体式がありますが,安定度と信頼性が高いのがSnO₂(酸化スズ)などの金属酸化物半導体です.ニオイ分子の持つ酸化還元反応が半導体の抵抗値を変えます.これにより硫化水素,アセトアルデヒド,アンモニアなどの還元性のあるニオイ分子の量を測定できます.
具体的には温度や湿度の環境変化の影響を軽減し,ニオイ分子の吸脱着を活性化するため,金属酸化物をヒーターで約400度に加熱します.この方式は長寿命ですので安定性と信頼性がありかつ安価です.また,本方式はアルコールにも反応するので飲酒検査器にも使われています.
もう少し詳しく見てみましょう
ニオイの分子が無い状態では酸化物半導体の表面には空気分子が吸着されます.こういう特性のある物質の半導体を選んでいます.この状態は酸素分子が半導体内の電子の流れを妨げます.酸素にはそういう性質があるのです.
ここにニオイ分子が来ますと酸素分子はニオイ分子に結びついて金属半導体から離れて飛び去って行きます.すると金属半導体内の電子は流れ易くなるので抵抗値が減るわけです.ちなみにニオイ分子が酸素と結びつくことをニオイ分子が酸化されたと言います.鉄が酸素分子が結びつくと酸化鉄(錆び)になります.鉄が酸化されたのです.
酸素と強く結びついて酸化され易いニオイ分子ならこの原理のセンサーで検出できます.
一方,塩素,オゾン,フロン,NOxなどは酸素と結びつかず,あるいはすでに酸素と結びついているため,この方式では検出できません.人間の鼻は塩素臭を嗅ぎ分けられますがこのセンサーでは不可能です.
また,ニオイ分子によって同じ濃度でも抵抗値の変化が違います.硫化水素,アンモニア,エタノール,水素の順に感度が下がっていきます.ですから,人間の感じるニオイの強さとは違いがあります.
まだまだニオイに関しては人間の鼻には及ばないセンサーですが,2.3.4.方式でもっと多種類の分子を特定して測定したり,わずかなニオイを検知する試みがなされています.
縄文人のニオイを測定器で嗅ぎ分けるにはまだまだ時間がかかりそうです.
今日はこれまで.ではまた.