植物でも動物でも生物には必ず名前を付けます.名前を付けることでみんなが特定の生物を特定することができるからです.例えばあなたの名前を仮に「山田太郎」さんとします.山田太郎さんの噂話があなたの村の中で広まったとします.
村人はすぐにあなたのことだとわかります.でも,全国放送で山田太郎さんと名前が出て来たとしたら,たとえ友人だとしても同姓同名の人だな程度で,果たして本人かどうかわかりません.山田太郎さんが全国にたくさんいるからです.
そこで仮に村の名前が大和村だったとします.「大和村の山田太郎」さんと名前がでればほぼ特定できます.学名もこのような仕組みになっています.もし,大和村が全国に10カ所あるとすると特定できなくなりますので,ルールとして「村の名前」にあたる「属名」の部分は一つだけになっています(例外的に植物と動物の間で同じ「属名」がついてしまった例もあります).
ただし,山田太郎の方は重複しても良いことになっています.そこで「大和村の山田太郎」と必ずセットで呼ぶようになっています.
種と学名について
生物は種という単位で他のものを区別したり体系的にまとめています.上の例で「大和村の山田太郎」というのが種の名前です.これを学名と呼びます.そして最初の部分の「大和村」を属名と呼びます.そして,次に続く「山田太郎」を種小名と呼びます.
これを一般化すると, 学名(種の名前)= 属名(最初の文字は大文字)+ 種小名(小文字) となります.これを2名法と言います.
ここで, 学名とは:大和村 山田太郎 ( binomen, scientific name, latin name, species name, name of a species)
属名とは: 大和村 (generic name) 種小名とは:山田太郎 (specific name, specific epithet)
これらは全てラテン語で命名されます.なぜかと言うと死語であるので今後の変化が無いことと,欧州での唯一の共通語であったことからです.
場合によって命名者名や年号などを付けます.植物,動物など分野で微妙に異なる場合があります.菌類などは一時混乱した歴史的経緯がありますので,それぞれの分野で微妙な表記差がある場合もあります.
分類学
そして,分類学では種を単位に似た者同士をグループ化していきました.科,目,綱,門,界,ドメインと順に大きなグループになっていきます.細分する必要がある場合は, 大Magn-, 上Super-, 亜Sub-, 下 Infra-, 小Parv-の接頭辞をつけます.科の下にTribeを置く場合があります.この訳語が植物学では連,動物学では族となっています.
生物分類は種ですが,これを亜種,変種,品種,園芸品種と細分化する場合があります.これを3名法と言います. 属名+種小名+「ssp.」または「subsp.」+亜種名(ssp, subsp: subspecies の略) 属名+種小名+「var.」+変種名(var: variant の略) 属名+種小名+「f.」+品種名(f: forma の略) 属名+種小名+「cv.」+「園芸品種名」(cv: cultivar の略) バラやコーヒーなど数千数万の品種があるものは細分しないと実用的で無くなってしまうため,以上のような細分化方法があります.
以上のことを知っていればラテン語の学名を見た時,多少違和感が少なくなると思います.
和名と標準和名
学名は一つの種に対して一つの名前というルールが厳密に決められています.一方, 和名は一般に使用されている習慣的な名前で一つの種に多くの異なる名があったり,複数の種が同じ名前で呼ばれたりします.また,地方によって名前が異なっていたりします.また,国が違えば同じ種でも名前が違います.
ただし,和名は日本語なのでその便利さから学術的に使用することがあります.学術的に使用する際にはカタカナ表記というルールがあります.桜とかさくらでなく,「サクラ」と表記します.これは戦前には「さくら」と,ひらがな表記だったのですが,戦後に逆転してしまいました.
和名はラテン語表記の学名より馴染みやすいので,日本にある植物に関しては学名と一対一関係で名付けた和名があります.これを標準和名と言います.この標準和名は一般に呼ばれている名前と異なる場合もあります.
今日はこれまで.ではまた.