今,読んでいる本の中で,後まで心に残りそうな部分を紹介します. 書名:植物学名入門 著者:L.Hベイリー 出版社:八坂書房
古典的良書です.本書植物学命名法の古典的入門書です.著者は米国の植物学者,園芸学者でのL.H.ベイリーで,氏の著書「標準園芸事典」は日本の農学,園芸学に大きな影響を与えました.
本書を読むにあたっては,本書の時代背景を知ってからの方がわかりやすいので,あとがきから読み始めることをお勧めします.
本書の内容
本編は1章から6章まであります.
1章 テーブルの上の眺め
2章 リンネウス(リンネ)
3章 同定
4章 命名の規則
5章 学名の話あれこれ
6章 学名とその言語
本書の読み方
1章は導入部で,現代人にはあまりピンとこない部分なので,最初は飛ばし読みして,読み始めの気力がある内に2章,3章,4章に進んだ方が良いでしょう.あとから読み返す時に味わいながら読めば良いと思います.
2章からは本題に入り,リンネから始まります.命名法に関してリンネは必須ですから,命名法の必要性や彼の業績を時代背景とともに説明してある部分は貴重です.
当初の命名に関わる多くの混乱なども興味深く読めます.また,植物学者と園芸家との関係などもうかがえます.
巻末の属名一覧と種の形容詞一覧はざっと眺めて気づくものがあれば注目する程度で良いと思います.
分類,命名,同定について
以前に植物の命名法について記事にしました.面倒くさいと思います.多くの混乱や変更もあります.
でも,広くて奥深い自然界の事物や現象を研究,応用していくには,まず名前がないと困ります.できれば世界中で共通の名前がある方が便利です.
そして,ひとつひとつに名前をつけるには,分類・整理してなくては名前が混乱してしまいます.分類・整理してから名前をつけなければ名前の乱立が起きてしまいます.
乱立を避けるには,目の前のものが,すでに名前があるものか,それと全く同じなのか,似ているけど変種なのか,全く違うものなのかを区別する必要があります.
区別するには区別するためのルールや線引きをしないと区別できません.例えば,白-黒のグラデーションを思い浮かべてみてください.白いものがだんだん灰色になって,黒くなっていきます.途中に境界線がないと白なのか灰色なのかを区別できないし,灰色なのか黒なのかの区別もできません.
白-黒のグラデーションでも区別できないのですから,数百色,数千色のグラデーションが複合されて表示されたらどのように区別したらよいでしょうか.
自然界の事物,現象は数百,数千,数万どころか,数億,数兆のバリエーションがあります.そして,今現在も新しいバリエーションが生まれ続けています.
では,どこまで細かく,分ければ良いのでしょうか?それは用途によります.むやみに細分化してしまうと無意味どころか,混乱が生まれ,誰も利用できなくなります.
例えば,デパートのトイレなどは男性用と女性用の二つに分けています.これを細分化して,男性子供用,男性若者用,男性中年用,男性老年用,女性子供用,女性若者用,女性中年用...と細分しても混乱してしまいます.現在は男性用と女性用だけでほとんど問題ありません.将来はもしかすると中性用ができるかもしれませんが...
さて,もとに戻りますが,植物の命名も用途に応じてつくらないと使えなくなります.植物学者と園芸家ではもともと用途が違うので,そのあたりから様々な混乱が生まれているのだと推察します.難しいですね.
植物学名入門のデータ
著者
L.Hベイリー Liberty Hyde Bailey(1858-1954),米国South Haven生れ
著書
標準園芸事典 The Standard Cyclopedia of Horticulture
栽培植物便覧 Manual of Cultivated Plants
園芸植物事典 Hortus
改訂版園芸植物事典 Hortus second
栽培植物改良論 Plant-Breeding
自然学習の思想 The Nature-Study Idea
- Horticulture:園芸
今日はこれまで.ではまた.