山河海空

自然から日常生活まで,独自の視点でみていきます.

第37週の花 ヒガンバナ(彼岸花)

ヒガンバナ

お彼岸が近づくとあちこちにヒガンバナが咲き始めます.漢字で彼岸花と書きますが,別名の多い花としても知られています.死人花(しびとばな),地獄花(じごくばな),幽霊花(ゆうれいばな),剃刀花(かみそりばな),狐花(きつねばな),捨子花(すてごばな),歯欠け婆あ(はっかけばばあ)など,方言もいれると千以上の呼び方があります.

ヒガンバナ

ヒガンバナの別称のほとんどがあまり好まれていないイメージがりますが,これは花の独特な形と咲き始める時期,場所などから来ているのと,毒性が有るところから来ていると考えます.彼岸花には鱗茎に神経毒のアルカロイドを多量に含みます.少量では吐き気や下痢,多量では死に至ります.

この毒性がミミズなどを寄せ付けないので,田畑や墓に植えられたようです.彼岸花はお彼岸の花として知られますが,花の形と色が炎をイメージするので,家に持って帰ると火事になるという迷信もあります.

この様に何となく不吉で嫌われながらも利用されてきた花ですが,曼珠沙華(マンジュシャゲ)などとも呼ばれ,天に咲く花という現生離れしためでたい兆しともされています.

ヒガンバナのデータ

目:キジカクシ目 Asparagales 科:ヒガンバナ科 Amaryllidaceae(クロンキスト体系ではユリ科) 亜科:ヒガンバナ亜科 Amaryllidoideae 連:ヒガンバナ連 Lycorideae 属:ヒガンバナ属 Lycoris 種:ヒガンバナ L. radiata 学名:Lycoris radiata (L'Hér.) Herb. シノニム:Nerine japonica Miq., Nerine radiata Sweet 和名:ヒガンバナ(彼岸花) 英名:red spider lily

花:9月中旬に赤い花,まれに白,園芸種で黄色もあります.散形花序で5-7枚の花弁が短い柄とともに横向きにつきます.花弁は40mm,幅5mmで細長いものが5-7個で大きく反り返っています. 成長:30-50cmの枝も葉も無い茎が伸び,先端に苞に包まれた花序が一つ付きます. 葉:開花終了し花が落ちてから30-50cmの細長い葉がロゼット状に出てきます. 生息場所:道端などに群生しています. 種:3倍体*であるため種子で増えることができず,球根で増えます.日本のヒガンバナは遺伝的に同一のクローンです.

注*3倍体: (2倍体) 植物体は母方由来と父方由来の染色体セットの2種の染色体セットをもっています.これを2倍体と言います. (4倍体) 稀に発生の初期に倍加した染色体セットが2等分されず4セットの染色体をもつ場合があります.これを4倍体と言います.4倍体は減数分裂ができますので,次世代も4倍体となります. (3倍体) この4倍体植物と2倍体植物が交配すると3倍体となります.3倍体植物は細胞分裂を行えますので成長し,花も咲きます.ところが,卵子精子形成時に減数分裂ができません.正常な配偶子がつくれませんので,受精,胚発生が起きず,種子ができません.

今日はこれまで.ではまた.