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1メートルの長さを決める話

メジャー

伊能忠敬が測量を始める約10年前の1790年,革命中のフランスでは1メートルを定義し,正確に求めようという動きがありました.

それには主に3つの候補がありました.

  1. 周期が1/2秒となる振り子の長さを1mとする方法
  2. 地球の赤道全周の長さ(横一周)の4千万分の1を1mとする方法
  3. 地球の子午線全周の長さ(縦一周)の4千万分の1を1mとする方法

実際に測定する場合,最も現実的だったのが3の方法でした.3の方法でも実際に北極や南極を測定したり,海上を測定する技術は無かったので,ダンケルクからスペインのバルセロナまでの距離を実測することになりました.

ダンケルクバルセロナ間の測量

具体的にはパリを起点に北方向のダンケルクチームと南方向のバルセロナチームの二手に分かれて測量しました.

ダンケルクからバルセロナまでの緯度差は9°39′27″.81と測定されますので、距離が正確に測れれば,計算で地球の縦一周が求められ,正確な1mを定義することができます.実際は1/4周が分かればその1千万分の1となります.

1792年から測量を開始し,1798年に終了しました.当時は「トワーズ」という長さの単位で測量しました.

結果として,北極点から赤道までの距離(地球縦1/4周)は5130740トワーズと求められ,その1万分の1を1メートルと定義しました.

メートル原器

測量の成果として1799年,1メートルが定義され,メートル原器が製作されました.メートル法の始まりです.

当時のフランスの長さの単位と参考計算:

1トワーズ=1.949メートル(メートルが確定後は2メートルに定義変更).

5130740x1.9490=9,999,812 5130740x1.9500=10,004,943 (逆算) 10,000,000/5130740=1.9490366

伊能忠敬の測量

一方,日本では伊能忠敬が第二次測量(1801年)の結果から緯度1度に相当する子午線弧長を28.2里と導き出しています.

フランスでの測量終了が3年前の1798年で,伊能は第一次測量(1800年)以前から子午線1度の測量に興味があった訳ですから,当時最先端の地球測定知識はかなり早い時期に日本に伝わり,理解され実証されていたことが分かります.

メートル法の普及

革命の最中に多くの困難を乗り越えて定めたメートル法ですが,世の中になかなか広まりませんでした.今まで慣れ親しんできた単位を換えるのそう簡単にできることではありません.仕事上でも大きなトラブルの原因になります.

フランスでは1837年にメートル法以外の単位使用を法律で禁じ,罰金制度を設けました.なんとメートルが定められてから100年以上経っています.

その後も世界に普及活動を広げ,科学,技術,産業の分野に広まりました.今日では日本でもメートル法を使っています.

今日はこれまで.ではまた.