今,読んでいる本の中で,後まで心に残りそうな部分を紹介します.
書名:世界は変形菌でいっぱいだ 増井真那 著者:増井真那 出版社:朝日出版社
良書です.著者は増井真那氏,2001年生まれです.6歳の頃から変形菌の飼育を始めたとのこと.私など,つい最近まで変形菌の存在すら知りませんでした.
粘菌の研究で有名な南方熊楠氏のことを調べ始めたのが昨年の秋で,粘菌,変形菌などについて学んでいるうちに本書に出会いました.
著者によると変形菌はほぼ粘菌と同じなのですが,粘菌の一種が変形菌で,その他に細胞性粘菌と原生粘菌の三種類あるとのこと.
そもそも変形菌とは何かというと,単細胞生物です.単細胞としては超巨大サイズの1メートルサイズ以上にまで成長する可能性を持った生物です.名前に菌とついていますが,菌ではなく,偽菌類として分類されています.
時間をかけてジワジワとゆっくり動きます.成長しながら文字通り変形し,形態が変わっていく不思議な生物です.
私が興味を持ち始めたのは,昨年の夏前にベランダのプランターに妙な茶色い塊ができていて,虫の卵かと思い,気持ちが悪いので水で流してしまいました.流してもまた数日後に同じようなものが出てきます.数か月後に図鑑をみていて,あれはひょっとすると「ドロホコリ」という変形菌だったのでは?と思いました.
写真も撮らずに捨ててしまったのは残念です.それ以来,変形菌をさがしながら公園を散歩しているのですが,見つけられません.
本書を読んで,すこしコツがわかったような気がしました.見つける「目」を鍛えないと見つけられないそうです.また,独特の臭いがあるので「鼻」でもいそうなところがわかるとのことです.
本書について
本書の特徴はすごく具体的でわかりやすいことです.普通の学者なら,見せてくれないことまで本書で開示しているところは微笑ましく思えました.
変形菌は深く研究されておらず,生態もよくわからない部分が多いし,飼育方法も手探りの状態だとのことです.育てるのに使うキッチンペーパーを年間30ロールも使い,餌のオートミールを年間5キロも与えてるとのことです.こういう実態を惜しげも無く公開してくれているのは大変参考になります.
また,著者の行っている自他区別の実験は面白いと思います.観察と工夫だけでここまで探ることができるのかと感心しました.
変形菌でいっぱいだ(以下Wikipediaから)
「その生活の特異なこと、また日常で接する機会が少ないことから、とても珍しい生物と思われがちだが、実際にはごくありふれたもので、人家の庭先に出現することもまれではない。イギリスにおける研究では森林や畑の土壌に生息する原生動物中、細胞数で多い場合には2割、少ない場合でも1%前後を変形菌が占めていたとされる。
変形体は薄く広がって、大きくても10cm程度のものが多いが、中には1mを超えるものが見つかることがあり、そうした大型の変形体が芝生などに出現して大騒ぎになることもある。多くの場合、変形体は普段は地中に潜っているので、ある朝突然妙なかたまりが出現、という格好になる。」
変形菌のデータ
ドメイン:真核生物 Eukaryota 門:アメーボゾア Amoebozoa 綱:コノーサ綱 Conosea 亜綱:変形菌亜綱 Myxogastria 和名:変形菌 英名:slime mould
下位分類(旧分類)
● ツノホコリ亜綱 Ceratiomycetidae ● 真正粘菌亜綱 Myxogastromycetidae ● ムラサキホコリ亜綱 Stemonitomycetidae Smirnov et al. (2005) ● Parastelida ● ハリホコリ目 Echinosteliida ● コホコリ目 Liceida ● ケホコリ目 Trichiida ● ムラサキホコリ目 Stemonitida ● モジホコリ目 Physarida
興味のある方は下記のサイトを参照してください.
日本変形菌研究会
変形菌の世界(国立科学博物館 植物研究部)
http://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/henkeikin/index.html
今日はこれまで.ではまた.