山河海空

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富士登山:吉田口5合目から登り,御来光を山頂で仰ぐ【5】下山道

富士山頂

いよいよ富士登山の話も後半の下山になります.14時頃のバスで帰るなら下山開始は遅くとも午前9時,通常8時前に出発です.5合目到着がギリギリだと気持ち的に辛いです.バスに乗る前にリフレッシュしておけば車中で熟睡できます.

下山時の注意

ルート

下山道は最初に登ってきたところの左側にある山小屋を過ぎて直ぐのところに大きな石柱が建っています.須走口下山道と吉田口下山道は途中まで同じ道です.

途中の分岐点がやや複雑な分岐の仕方をしているのと須走口の方が下方向へ向かっているので間違えやすく,須走口に下りる人が多いです.標識を一つ一つ確認して,吉田口に向かいます.

具体的には下江戸屋と言う山小屋前で分岐して山小屋の脇にあるテラスみたいな細い道を通り抜けます.さらに通り抜けた後にも分岐がありますので,吉田口方面へ進みます.

この付近は細い道が入り組んでいるので,地図を見ても分かりにくいです.全ての標識を確認してください.下り始めても念のため「吉田口方面」だけは何度か確認してください.

また,ここが最後の山小屋です.トイレもここからしばらくありません.飲みのの購入などもここでしておいた方が良いです.

落石

さて,下山道は登山道とは別の道をたどります.6合目の富士山安全指導センター手前で合流します.これは単純に登り下りの混雑解消目的もありますが,下りの場合,段差が少ない方が比較的安全という理由もあります.

以前は工事や運搬用のブルトーザー専用道でした.昔の下山道は吉田大沢という現在登山道の北側沢の中を通る道でした.

昭和55年(1980年)8月14日午後1時40分頃,死者12名負傷者31名の落石事故があり,その後,下山道がブルトーザー道に代わりブルトーザーによる貨物運搬と共用になっています.

下山中に頂上付近を見上げると,頂上付近に巨大な岩の壁が見えます.これは久須志岳のを構成する岩なのですが,これが崩れて1-2m大の巨石50-60個が斜面を5合目付近まで転がり下山者を直撃しました.

今も落石の痕跡はあります.しかも,頂上付近の岩はまだ崩壊途中でいつ再び大規模崩壊が起きても不思議ではありません.

山裾をぐるりと周る道の途中にコンクリートの屋根のついた廊下や防御壁があります.これは沢の下部や急斜面部など落石危険個所にあります.今でも小規模の落石は起こります.通過時は速やかに通過して途中で休憩などは控えましょう.特に夜は状況は地形が見えないので注意しましょう.

富士山では危険個所に限らず,登山シーズン中に数回の落石事故が起きています.登山,下山時に石を蹴り落としたり投げたりすると,それがキッカケになることもありますから絶対にしないようにしてください.ちいさい石でも大けがを招きます.

天候

昼に近づく頃から天候が悪くなることが多いです.早い時には御来光の頃から風向きが変わることにより麓の低い谷を雲が流れてきます.この雲がだんだんと登ってきます.

従って下山する際に晴れたところから,下界の雲の中に入って行くことになります.多少濡れたりします.でも,これはラッキーです.

なぜなら,晴天の日は灼熱地獄で,さらに前の人の砂塵が舞います.靴の中,鼻の中まで砂だらけになり,その上滑りやすく何度か転びます.靴のサイドもボロボロになります.靴下を二枚履く理由は靴の中に入る砂の刺激を減らすためです.靴のカバーを付けている人もいます.

日焼け止めとサングラスは面倒でも必ずしましょう.あとチョットで森林地帯だと思ってもなかなか到着できません.紫外線はかなり強いです.

最悪の天候

私は天気が悪そうな時は中止しますのでめったに最悪になりませんが,天気が急変して雷雲がでる場合があります.

下山道は逃げ場が全くありませんので落雷に当たる確率はかなり高いです.万一,山頂で雷が発生した場合はコースを変えるか天候回復をまちます.状況次第です.

命には代え難いので無理は絶対にしません.逃げ場が無い所での落雷は本当に危険です.

もし,下山道途中で雷の兆候がみえたら,急いでで森林地帯まで走るか山小屋方面に逃げます.とにかく雨具など着ている時間があればその間に数百メートルでも安全地帯に逃げ込むようにします.

また,絶対に鉄の鎖などの近くに行かないようにしましょう.山の中の鉄鎖は避雷針と同じです.

ケガ

下山道が乾燥しているときは転びます.転んだ時にケガをしないように手袋をしましょう.転び方もイメトレしておきましょう.膝を捻ったり足首を捻ったりすると帰れなくなります.疲れていてもいい加減な足の出し方をすると捻ります.一歩一歩正確にしっかりと踏み出していきましょう.

トイレ

トイレが限られています.あと何キロの表示も直線距離だったりしますので実距離や時間はかなりかかります.見晴らしが良いのでチョット物陰でと思っても物陰が全くありません.

須走との分岐点にある山小屋(下江戸屋)のところにあるトイレは絶対に立ち寄った方が良いです.次の7合目のトイレまでかなり遠いです.トイレを我慢して長く歩くのは一種の拷問です.

ブルトーザーとのすれ違い

ブルトーザー道幅ギリギリで通ります.必ず足場の良い所で止まって待ちましょう.でこぼこで崩れやすい坂道でを軌道車走ります.道路を走る4輪車の様に安定していません.道幅もギリギリなのですれ違い時に歩行者が動いていると非常に危険です.

また,道の折れ曲がり場所はブルトーザーの切り返し場所です.邪魔になりますので状況に注意しながらよけましょう.

ジグザグが続く下山道

以上が下山時の注意点です.ジグザグ道が森林地帯まで続きます.ジグザグは最初は小さいジグザグですがだんだん大きなジグザグになっていきます.数えかたによりますが,私は48と数えられますので,い,ろ,は,に,ほ,へ,と・・・と富士のいろは坂と勝手に名前を付けています.

単調な下りジグザグなので飽きます.でも,下りれば下りるほど呼吸が楽になっていきます.気温も上がっていきます.疲労が増して,いったい辛いのか楽になっているのかよくわからなくなります.

こんな時は辺りを見回してください,よく見れば高山植物が咲いていますし,石もすべて溶岩です.その溶岩の表面をよく見ると赤いダニ(=タカラダニ?)のような小さな虫も動いています.こんな殺風景な砂漠の様な所にも生命があります.観察してよく見れば面白いものがたくさん見つけられます.

次回は森林地帯から5合目までのお話です.今日はこれまで.ではまた.

次回へ続く(クリック)