山河海空

自然から日常生活まで,独自の視点でみていきます.

ビタミン様物質とは何でしょうか?

錠剤

時々聞きなれないビタミン名が登場します.ビタミンFとかビタミンP,あるいはビタミンUなどなど...これらはビタミンと付くけれど実はビタミンではありません.ビタミン様物質と呼ばれています.

今日はビタミン様物質についてお話しします.その前に,ビタミンの名前の由来と名付け方の経緯から始めます.

ビタミンの名前の由来と名付け方の経緯

1910年に鈴木梅太郎が米糠からオリザニンの抽出成功しました.これは最初のビタミン抽出となります.1911年カシミール フンクCasimir Funkが米糠から抽出した成分にアミンの性質があったため,vitamine=生命のアミンと名付けました.これが後にビタミンB1(チアミン)発見となります.

その後アミンと関係ないビタミンも見つかったので,vitamineから最後のeを取りvitaminとなりました.ビタミン発見は続きます.

1913年にエルマー・ヴァーナー・マッカラムElmer Verner McCollumによりバターまたは卵黄の脂肪から(後の)ビタミンBとは明らかに異なる脂溶性物質が抽出されました.そこで彼は,脂溶性のものをfactor Aと呼びます.後にこれが脂溶性のビタミンAとなり,水溶性のビタミンBと区別されることになりました.

さらに,1920年壊血病に有効な成分の抽出され,これをビタミンCとしました.ビタミンCであるアスコルビン酸ascorbic acidという名前は壊血病scorbutic diseaseというところから来ているという事は以前お話ししました.

そもそも昔から脚気壊血病が大きな問題となっていました.そして,これがビタミンという微量の有効成分を抽出研究する大きな動機になっていた訳です.

さて,この時点でビタミンA,B,Cが出そろって脚気壊血病などビタミン欠乏症に成果を出してハッピーエンドになったのですが,さらなる有効成分の抽出,発見競争が激化していき,新物質が年々発表されます.一つの手法が見つかると集中的に研究が進みます.

年々新物質が抽出されます.正式な化学構造が判明するまで数年かかりますので,それまでの間混乱を避けるため,仮名称としてビタミンD,E,F,G...とアルファベットを割り振っていきました.また,Bに関しては非常に似た性質を持つグループが見つかったのでB群としてビタミンB1,B2,B3,B4,...と数字を割り振りました.

そして後日研究が進み,割り振ったものが実はビタミンでは無かったり,ビタミンHと付けたけれど実はビタミンBだったり,混合物だったり,といろいろな問題が出てきました.整理された結果,現在では人にとってのビタミンは13種類と特定されました.

すなわち,脂溶性ビタミンとして ビタミンA,D,E,Kの4種水溶性ビタミンとして ビタミンB群8種とビタミンCの合計9種です.

ビタミン様物質

逆に言うとそれ以外ビタミン〇と名付けられたものは人にとってビタミンでは無かったわけです.でも,一応有効成分として抽出されたわけですから何らかの効果はありそうですけど...

残念ながらビタミンとは認められなかったけれど,ビタミンの様な働きをして,人にとって有効であろうと思われるものをビタミン様物質と呼んでいます.

要するに,ビタミン様物質とはビタミンでは無いけれど微量でビタミンの様な働きをする有効成分ということになります.

これらは体内で合成できるものなので,ビタミンの様に不足すると欠乏症が現れるかどうかが不明です.生体の様々な条件により複雑なメカニズムがあるので多くは研究途上です.でも,有効成分として時々話題になるわけです.今後の発展を期待します.

今日はこれまで.ではまた.

参考:

以下はビタミンと思われたけれど後でビタミンに認定されなかった物質です.アルファベットをほとんど使いきっています.一度名付けると,混乱を避けるためそのまま欠番になっています.この中には,その後の研究で人にとって害のあるものもあります.

これ以外のものでも微量で有効な成分をビタミン様物質とすることもあります.太字はビタミン様物質

ビタミンB4 アルギニン、シスチン ビタミンB8 エルガデニル酸(Ergadenylic acid, アデニル酸) ビタミンB10 葉酸はじめ各種ビタミンB群の混合物.ビタミンR ビタミンB11 葉酸類似化合物ビタミンS ビタミンB13 オロト酸 ビタミンB14 葉酸またはリポ酸などの混合物 ビタミンB15 パンガミン酸(ジメチルグリシンやトリメチルグリシンなど) ビタミンB16 メチルメチオニンスルホニウム塩酸(キャベジン) ビタミンB17 アミグダリン (有害) ビタミンBH イノシトール ビタミンrBP コリン ビタミンBT カルニチン ビタミンBX パラアミノ安息香酸(葉酸の部分構造) ビタミンF リノール酸などの必須脂肪酸 ビタミンI 米糠の抽出物.かつてはビタミンB7 ビタミンJ カテコール,フラビンまたはコリン ビタミンL1 アントラニル酸 ビタミンL2 アデニルチオメチルペントース ビタミンN チオクト酸(α-リポ酸) ビタミンO カルニチン ビタミンP クエルセチン, ヘスペリジン, ルチンなどのフラボノイド ビタミンQ ユビキノン,コエンザイムQ ビタミンT テゴチン ビタミンU 塩化メチルメチオニンスルホニウム(キャベジン) ビタミンV ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド