土用と言えば丑の日のウナギが思い浮かびますが,実は土用は年間に4回あります.立夏・立秋・立冬・立春の前約18日間が土用です.
土用はそもそも古代中国の五行思想(ごぎょうしそう)から来ています.五行思想というのは,万物が木・火・土・金・水の5種類から成り立っているという考え方です.
四季の春夏秋冬に対して,春に木、夏に火、秋に金、冬に水を割り当てました.なんとなく意味がわかります.ところが,四季は4つしかないので,5つ目の土が割り当てられません.
そこで,各季節の変わり目にむりやり土の期間を差し挟んで土用としました.それで,土用だけは4つに分けられて年に4回あります.
天文学的には,四立(立春45度,立夏135度,立秋315度,立冬225度)の18度前,すなわち,27度,117度,207度,297度となる日が定気法での土用の入りとなります.
五行思想
五行思想ではあらゆるものを5種類に分けて,世界の成り行きを判断しようとしました.
五行思想 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E8%A1%8C%E6%80%9D%E6%83%B3
五行 : 木 , 火 , 土 , 金 , 水
五色 : 青(緑) , 紅(赤) , 黄 , 白 , 玄(黒)
五方 : 東 , 南 , 中 , 西 , 北
五時 : 春 , 夏 , 土用 , 秋 , 冬
五星 : 歳星(木星 , 熒惑(火星) , 鎮星(土星) , 太白(金星) , 辰星(水星)
五日 : 木曜日 , 火曜日 , 土曜日 , 金曜日 , 水曜日
五音 : 角 , 徴 , 宮 , 商 , 羽
五声 : 呼 , 言 , 歌 , 哭 , 呻
五臓 : 肝 , 心(心包) , 脾 , 肺 , 腎
五情 : 喜 , 楽 , 怨 , 怒 , 哀
五志 : 怒 , 喜・笑 , 思・慮(考) , 悲・憂 , 恐・驚
五腑 : 胆 , 小腸(三焦) , 胃 , 大腸 , 膀胱
五指 : 薬指 , 中指 , 人差指 , 親指 , 小指
五官 : 目 , 舌 , 口 , 鼻 , 耳
五液 : 涙 , 汗 , 涎 , 涕 , 唾
五塵 : 色(視覚) , 触(触覚) , 味(味覚) , 香(嗅覚) , 声(聴覚)
五禁 : 辛 , 鹹(塩辛さ) , 苦 , 甘 , 酸
五味の走る所 : 筋 , 骨 , 営・智 , 気 , 精
五主 : 筋・爪 , 血脈 , 肌肉・唇 , 皮毛 , 骨髄・髪
五事 : 貌 , 視 , 思 , 言 , 聴
五虫 : 鱗(魚と爬虫類) , 羽(鳥) , 裸(ヒト) , 毛(獣) , 介(カメ、甲殻類と貝類)
五獣 : 青竜 , 朱雀 , 麒麟や黄竜 , 白虎 , 玄武
五麟 : 聳孤(しょうこ) , 炎駒(えんく) , 麒麟(きりん) , 索冥(さくめい) , 角端(かくたん)
五畜 : 犬 , 羊 , 牛 , 鶏 , 猪
五果 : 李 , 杏 , 棗 , 桃 , 栗
五穀 : 麻・胡麻 , 麦 , 米 , 黍 , 大豆
五菜 : 韭 , 薤 , 山葵 , 葱 , 藿(カク:豆の葉)
五常 五徳 : 仁 , 礼 , 信 , 義 , 智
五経 : 楽 , 書 , 詩 , 礼 , 易
五悪 : 風 , 熱・暑 , 湿 , 燥・寒 , 寒・燥
五変 : 握 , 憂 , 噦 , 欬 , 慄
五金 : 錫(青金) , 銅(赤金) , 金(黄金) , 銀(白金) , 鉄(黒金)
五神 : 魂 , 神 , 意 , 魄 , 志
十干 : 甲・乙 , 丙・丁 , 戊・己 , 庚・辛 , 壬・癸
十二支 : 寅・卯・辰 , 巳・午・未 , なし , 申・酉・戌 , 亥・子・丑
九星 : 三碧・四緑 , 九紫 , 二黒・五黄・八白 , 六白・七赤 , 一白
八卦 : 雷・風 , 火 , 山・地 , 天・沢 , 水
古代中国人の五行思想はあらゆるものを綿密に理屈で固めています.あまりがちがちに固めると柔軟性が失われて現象の方をむりやり理論当てはめるような本末転倒もおこります.
現代の科学は実験で検証し,理論が合わない場合は修正や新理論が出されていく仕組みになっています.新事実や発見に追従していく姿勢があります.
もっとも,西欧で生まれた科学も古代ギリシア・ローマ,イスラーム世界において4元素説(火・空気(風)・水・土)が長く信じられていました.様々な自然現象を身近にあるものを代表選手として全てを解釈しようとする考え方はごく自然な発想なのかも知れません.
それにしても,十二支が土=「なし」はともかく,方位に「中」を入れて五方にしたり,四季に無理やり土用を入れたり,ちょっと強引ですね.12や4を5つに分けるのは難解です.
現代でも,五行思想の影響は,曜日(月火水木金土)や惑星(水星,金星,火星,木製,土星)の名前で残っています.
今日はこれまで.ではまた.