[caption id="attachment_394" align="alignnone" width="300"] 燕子花(かきつばた)図屏風[/caption]
堀切菖蒲園について書いていて,いろいろな疑問が出て来ました.菖蒲,アヤメなどあいまいな呼び方になっているけれど,一体どうなっているのだろうか?アヤメは土の上に育ち,ショウブは水の中と単純に覚えていたのですが,ハナショウブ,カキツバタ,ノハナショウブなどの名前が出てきて混乱してきました.
ここで一度簡整理したいと思います.とりあえず,ざっと見てください.やや複雑なので,最後に分かりやすくまとめてあります.
ショウブのデータ(Wikipedia参照)
菖蒲,Acorus calamus APG体系ではショウブ目ショウブ科のショウブ属に属する(旧来のクロンキスト体系ではサトイモ目ショウブ科で,新エングラー体系などではサトイモ目サトイモ科のショウブ属に属する)
池,川などに生える単子葉植物の一種.ユーラシア大陸に広く分布し,日本を含めて東アジアのものは変種 A. calamus var. angustatusとされる.薬草,漢方薬としても用いられている.
茎は湿地の泥の中を短く横に這い,多数の葉をのばす.葉は左右から扁平になっている.花は目立たない黄緑色の肉穂花序で5月ごろ咲く.花茎は葉と同じ形で,花序の基部には苞が1枚つくが,これも花茎の延長のように伸びるので,葉の途中から穂が出たような姿になる.
ハナショウブと混同されることもあるが,両者はまったく別の植物である.古くは現在のアヤメ科のアヤメではなく,この植物ショウブを指して「あやめ」と呼んでいた.
アヤメのデータ
菖蒲,文目,綾目,学名:Iris sanguinea アヤメ科アヤメ属の多年草
アヤメは多くが山野の草地に自生し,他のアヤメ属の種であるノハナショウブやカキツバタのように湿地に生えることは稀.葉は直立し高さ40~60cm程度.5月ごろに径8cmほどの紺色の花を1-3個付ける.外花被片(前面に垂れ下がった花びら)には網目模様があるのが特徴で,本種の和名のもとになる.花茎は分岐しない.北海道から九州まで分布する.
古くは「あやめ」の名はサトイモ科のショウブ(アヤメグサ)を指した語で,現在のアヤメは「はなあやめ」と呼ばれた. アヤメ類の総称として,厳密なアヤメ以外の種別にあたる,ハナショウブやカキツバタを,アヤメと呼称する習慣が一般的に広まっている(施設名,創作物など).
カキツバタのデータ
燕子花,杜若,Iris laevigata アヤメ科アヤメ属
カキツバタは湿地に群生し,5月から6月にかけて紫色の花を付ける.内花被片が細く直立し,外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどを特徴とする.
江戸時代の前半にはすでに多くの品種が成立しており,古典園芸植物の一つでもあるが,江戸時代後半にはハナショウブが非常に発展して,カキツバタはあまり注目されなかった.現代では再び品種改良が進められている.
漢字表記の一つ「杜若」は,本来はヤブミョウガという別種の漢名(「とじゃく」と読む)であったが,カキツバタと混同されたものである.
ハナショウブのデータ(Wikipediaより抜粋し整理)
花菖蒲,Iris ensata var. ensata アヤメ科アヤメ属の多年草 シノニムはI. ensata var. hortensis, I. kaempferi. アヤメ類の総称としてハナショウブをアヤメと呼ぶことも多く,間違いにはあたらない(あやめ園,あやめ祭り,自治体の花名など)
ハナショウブはノハナショウブ(学名I. ensata var. spontanea)の園芸種である.6月ごろに花を咲かせる.花の色は,白,桃,紫,青,黄など多数あり,絞りや覆輪などとの組み合わせを含めると5,000種類あるといわれている. 系統を大別すると,品種数が豊富な江戸系,室内鑑賞向きに発展してきた伊勢系と肥後系,原種の特徴を強く残す長井系(長井古種)の4系統に分類でき,古典園芸植物でもある.他にも海外,特にアメリカでも育種が進んでいる外国系がある.
近年の考察では,おそらく東北地方でノハナショウブの色変わり種が選抜され,戦国時代か江戸時代はじめまでに栽培品種化したものとされている.これが江戸に持ち込まれ,後の3系統につながった.長井古種は江戸に持ち込まれる以前の原形を留めたものと考えられている.
アヤメ類の総称として,ハナショウブを「アヤメ」と呼称する習慣が多く見られる.その一方で「ショウブ」と呼称することもあるが,菖蒲湯等に使われるショウブは,ショウブ科(古くはサトイモ科)に分類される別種の植物である.
ノハナショウブのデータ(Wikipediaより抜粋し整理)
野花菖蒲,Iris ensata または Iris ensata var. spontanea アヤメ科アヤメ属の多年草.園芸種であるハナショウブ(花菖蒲,I. e. var. ensata)の原種
花茎の高さは40cmから100cmになる.葉は剣形で全縁. 花期は6月から7月で,赤紫色の花びらの基部に黄色のすじが入るのが特徴.アヤメには網目模様が入り,カキツバタには白色から淡黄色のすじが入る.
まとめ
上記データを詳細にみると違いがわかってくるのだが,やや複雑になっているので,ここで整理してみます.
ショウブだけがショウブ目ショウブ科のショウブ属(またはサトイモ目サトイモ科のショウブ属),その他はアヤメ科アヤメ属.つまり,アヤメ, カキツバタ, ハナショウブ,ノハナショウブはアヤメの仲間.
アヤメだけは山野の草地に自生する.その他は湿地に自生する.
名前の混乱は昔からあり,複雑.昔ははショウブを「あやめ」と呼んでいた.現在のアヤメは「はなあやめ」と呼ばれた.
網目模様があるのアヤメ.アヤメは網目模様のこと.これを知れば覚えやすい.
要するに,ショウブだけが別物で,総称としてのアヤメの中にアヤメ,カキツバタ,ハナショウブ,ノハナショウブがあるということです.そして,アヤメだけが野山に自生し,その他は湿地に自生します.
そして,江戸時代前半にカキツバタがブームになりましたが,江戸時代後半からハナショウブのブームとなり,園芸種として5,000種以上が生まれたという事で,このハナショウブの原種はノハナショウブという事です.
別の見方をすれば,鑑賞用として多くの種類があるのはハナショウブで,湿地に自生するけれどアヤメの仲間です.ショウブも湿地に自生しますが,アヤメの仲間とは別物です.花が似ているので名前の融通が混乱を招いている良い例です.
少し整理されたので,ご理解いただけたでしょうか?上記の知識を基に見分け方を学べば覚えやすいと思います.
今日はこれまで.ではまた.