山河海空

自然から日常生活まで,独自の視点でみていきます.

富士山の標高は3776mですが,昔は3778メートルだった

[caption id="attachment_382" align="alignnone" width="300"]富士山 富士山[/caption]

昨日のブログで,太宰治富嶽百景中「富士には月見草がよく似合う」は名句ですが,三七七八米の富士の山とあるので疑問に思い調べてみました.私の記憶では3776mです.

まず,富岳百景の時代ですが,データは以下の通りです. 初出 『文体』1939年2月号、3月号 単行本 『女生徒』(砂子屋書房、1939年7月20日) 執筆時期 1938年12月上旬~12月20日頃 原稿用紙 20枚 1938年に執筆されたことがわかります.

Wikipedia「富士山」によると,火口の南西側に最高点の剣ヶ峰があり二等三角点(点名は,富士山.標高3775.51m 2014年4月1日改算[2])とあります.また,国土地理院のHPには,点名:二等三角点「富士山」標高:3775.5mとあります.従いまして,現在の富士山の標高は3775.5mという事になります.

いろいろ調べますと,富士山の高さは以下の様にその都度変わっています. 1887年(明治20年)3778m 参謀本部測量局 1926年(大正15年)3776.29m 参謀本部測量局 1962年(昭和37年)3775.63m 国土地理院 1991年(平成3年)3,775.63m 国土地理院 1993年(平成5年)3774.97m 大成建設 2017年(平成17年)3775.51m 国土地理院 (剣が峰近くの二等三角点の基準点の成果)

となっていますので,1938年の執筆当時では,1926年の測量後ですからすでに12年前に3776mの測定値が出ていたことになります.当時の事情はよく分かりませんが,太宰が覚えていた値は1887年時の測量値3778mでそれが富嶽百景に使われた値となります.

当時の測量精度がどのくらいのものかわかりませんが,最近の測量の1962年と1993年,そして2017年の値がそれぞれ3775.63m, 3774.97m, 3775.51mと変動しているのがわかります.

また,1923年9月1日に発生した関東大震災はM7.9の大地震でしたので,それにより沈下したとの説もあります.測量精度によるものか実際の沈下によるものか判断は難しい所です.また,近年の測量精度は測量方法が変わってきたことと以前お話ししましたジオイド面や重力分布,近年の地震などの諸影響があるので測定値は変わります.GNSS連続観測システムGEONETGNSS Earth Observation Network System)では位置変動を1cm以下の精度で測れますが,重力まで考慮されたジオイド面は測れませんので,日本水準原点を基準に求めるには複雑になります.

参考:山の高さとは?どこからどこまででしょうか?標高とは何でしょうか? https://sangakaiku.com/30.html

さて余談ですが,現在の富士山の標高は3775.51mと述べてきましたが,実は自然物としての最高地点はこの三角点から北へ約12mのところにある岩の上にあることをご存じでしょうか?そこが富士山の最高点で三角点より0.61mだけ高い(1991年の観測)のです.最近では三角点ではなく,有名な山については最高点を標高にするという考えもあるので,それに従うと61cm程高く表記されます.

ちなみに富士山の場合,最高点にボルトが埋めてあります(下写真).もし登る機会がありましたら三角点のすぐ近くなので確認してください.直ぐ脇には測候所の建物があり,実際の日本最高点は建物の頂上になるのだけれど......

[caption id="attachment_380" align="alignnone" width="300"]富士山頂最高点の岩 富士山頂最高点の岩[/caption]

それから三角点にある国土地理院の説明は,5年前の時点で,3775.63mでした.現在は直したのでしょうかね?標高って難しいですね.石に掘るとあとで修正が大変です.

[caption id="attachment_381" align="alignnone" width="300"]富士山二等三角点の説明 富士山二等三角点の説明[/caption]

今日はこれまで.ではまた.