山河海空

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今,読書中の本:日曜日の歴史学 山本博文

今,読んでいる本の中で,後まで心に残りそうな部分を紹介します. 書名:日曜日の歴史学 著者:山本博文 出版社:東京堂出版

良書です. 昨日紹介しました「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」と重なる内容もありますが,こちらの本では,当時の資料を丹念に調べて実情を探る学術的姿勢が伺われます.

その時代の文献だからと言って全的に信用するわけでは無く,資料の背景を考慮しながら,信用度を確認した一級資料を主軸に推理小説のように謎を解いていきます.

歴史は多くの人が事実をどう解釈するかで変わりますし,中には意図的に操作されたものもあります.これらから真実に近いものを知るには,その時代時代の背景や習慣なども考慮しないとなりません.

現代の様にフィルムやデジタルデータに記録されていても一体真実は何なのかを知るのは困難なのですから,文献等だけによる調査には限界があります.

本書の概略

第一講は江戸時代の人物に学ぶ隠居学として,当時の人々の老年の過ごし方が紹介されています.ほとんど現代人と変わらないのでは?考えさせられます.

第二講では歴史愛好家と研究者のアプローチについて書いてあります.ネットで検索するだけではなかなか,真実に至りません.例として,「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」にも紹介されていたバカ殿の射殺事件があげられており,簡単にまとめられていた事件も,史料を調べていくと本当のところはいったい何だったのか?が様々な観点から推測されています.

本書を読まなければ,「フーンそうか」で終わっていたことも,実際は奥深いなとわかります.人の記憶には限界があるので,簡単にまとめられている話の方が重宝ですが,それぞれに深い事情があるのは今も昔も同じだとわかります.

第三講,信長研究,第四講,徳川中心史観や悪代官史観に疑問をもつ,第五講,年号から江戸時代を大きくつかむ,など興味ある題材が第十講まで続きます.

ネット検索だけでなく,史料や文献にあたることの大切さと,定説の根拠や不確かさについて考え直してみることの大切さがわかる一書です.

日曜日の歴史学のデータ

キーワード

神沢杜口 貞幹,与力,翁草,伊能忠敬大日本沿海輿地全図,太田南畝,御家人,寝惚け先生文集,孝義録編纂,村尾嘉陵,江戸近郊道しるべ,貝原益軒,養生訓,明石藩主,引用文献の明示,甲子夜話,よしの冊子,根岸鎮衛 やすもり,耳袋,上坂次郎,元禄御畳奉行の日記,鸚鵡籠中記,江戸藩邸物語,公儀所日乗,由比小雪の乱,伊予小松藩会所日記,井関隆子日記,三職推任問題,日々記,信長公記信長記,小牧長久手の戦い,徳川実記,史実改ざん,幕府の住民配慮,大井川の橋,「恐れながら」の書出し,鎖国の本質,鎖国と貿易,綱吉の仁心政策,礼儀忠孝,吉宗,享保,足高の制,役高,人材登用と財政,自由な田沼時代,文化文政,江戸の文化が花開く,御三家,御三卿,通詞,大奥という役所,幕府収入の1/4が大奥へ,鬼平犯科帳,火付け盗賊改,長谷川平蔵 宣以 のぶため,仕掛人・藤枝梅安,自身番,大番家,岡っ引,目明,悪人出身,古地震研究,宝永の大地震,宝永四年(1707)十月四日,安政の大地震安政二年(1855)十月二日

著者

山本博文 1957年岡山県津山市生まれ.

山本博文氏 著書

寛永時代

江戸城の宮廷政治

鎖国と海禁の時代

島津義弘の賭け

徳川将軍家の結婚

切腹

日本史の一級資料

お殿様たちの出世

大奥学

江戸の組織人

現代語訳・武士道

天下人の一級資料

武士の評判記

消された秀吉の真実

江戸お留守番役の日記

今日はこれまで.ではまた.