山河海空

自然から日常生活まで,独自の視点でみていきます.

今日の言葉を考える ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの言葉から

人間には多くの宝物や多くの楽しみが与えられます.しかし人生にとってよいことは軽快な心で,それがはるかに素晴らしい最大の幸福と収穫をもたらすのです.

(英訳) Many treasuries and much pleasantness are granted to the man. But a life, goodness good is a light heart by far the most for the biggest happy most abundant profit.

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

人の性格は環境に影響されます.環境の中でも気候は大きな部分をしめています.ニーチェゲーテの生まれた欧州北部は寒くて晴れの日のほとんど無い長い冬となると憂鬱が病の様に広がります.南欧の常時お日様に見守られて暖かい気候とは大違いです.

一般的に,「堅実で律儀な心」を代表するドイツをはじめとする欧州北部と,生活に楽しみを見つけるために生きている「軽快な心」をもつ,欧州南部のイタリア,スペイン,ギリシャなどの地域の違いは,民族性というよりも気候に影響されているのではと思いたくなります.

ニュースでは経済的に強いドイツと,経済的に破綻か破綻すれすれの国々の対比が話題になりますが,一人ひとりの生活をみると,いったいどちらが幸せなのか,よくわからなくなります.

「冒頭の軽快な心」はドイツ的なものの裏返しですが,当時のドイツ人の知識人の多くが,ドイツから逃れ,スイスや南欧に憧れ,移住したり,長期滞在していました.重苦しい気候がつくる「重い心」が有害で不幸の源だと直観していたのでしょう.

現在でも裕福な人たちがバカンスを長く取って,南欧で過ごすのは環境を変えることで気分転換し,気持ちを軽くしたいとの意図があるのではと思います.

日本の気候と心

さて,日本には厳しい夏と冬があります.曇天や雨天に閉ざされる梅雨と秋の長雨もあります.でも,数週間もすると気候は変わります.極端な場合には台風や地震などもありますけど...

日本に住むと,当たり前の様に自然に合わせて暮らしていこうという気持ちが生まれます.そうしないと暮らせませんでした.

「しょうがない」ということばが使われてきました.自然の被害対する時の日本人特有の諦念と対応の現れかもしれません.「しょうがない」の後には「それならこうしてみよう!」が続きます.これは,自然との直接の戦いを避けて,自然と対話を試みているのです.日本人の長年のこういう姿勢が厳しい現実に対応できる,「柔軟で適応力に富んだ心」を育ててきたのではないかと思います.

ところが,近年では都市化や住環境の近代化,科学技術の発展,農業技術の進歩,グローバル化などが進み,自然をコントロールする自信どころか,コントロールして当たり前の考えが生まれてきました.受け入れられない現実に対して,「しょうがない」から「絶対に許せない」とか「想定外」などの言葉が増えてきました.どんな問題でも専門家が何とかしてくれるという期待が大きく,もし,専門家ができない時には訴訟や賠償を求めたり,政府の責任追及をするのが当たり前の様になってきました.

個人個人の生活をみても,空やかなたの山々を見て微笑むこと少なく,PCやスマホの画面をのぞき続ける日々にです.危険な川や海で泳ぐことは避けて,安全なプールで水泳を習います.事故の責任を避けるために,少しでも危険そうな公園の遊具は撤去されてしまいます.自然や危険との付き合い方,対応の仕方が変わってきました.

これではせっかく日本に生活しているのに,優しくても厳しい自然の変化を受け入れて,自然ととともに自分の心や生活を整えていく習慣が薄れていき,環境に柔軟で適応力ある生き方が失われてしまいそうです.

技術や科学,医学,法学,宗教などをガチガチに信じ込み,なにかと自然に対決し,バランス感覚の無い「強情でリスクをとらない重い心」が日本人の目指すべき方向なのでしょうか?

こういうやり方は,日本の風土に合わず,社会の「ひずみ」が大きくなってきたように思えます.私には西洋式の合理性を取り入ながらも,「軽快で柔軟性と適応力に富んだ心」に寄って生きる方がより幸福そうに思えるのですが......

今日はこれまで.ではまた.