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日本の硬貨とその金属

日本で生活する限り必ず使うのはお金ですが,紙幣と硬貨があります.硬貨のことを英語ではコインと言いますが,世界各国で身近なお金として使われています.なぜお金には紙幣と硬貨があるかというと,硬貨は金属製なので,耐久性が優れているからです.

もちろん法律上,慣習上で紙幣と硬貨は役割があり,それも理由になるかも知れませんが,もし,耐久性を考えないとするなら,紙製のコインもありうるわけです.セラミックならともかく,紙製のコインなんてあまり聞いたことがありません.

各硬貨の金属

日本には,1円,5円,10円,50円,100円,500円があります. それぞれの金属は以下の通りです.

1円:アルミニウム

5円:真鍮=黄銅(銅60-70%+亜鉛30-40%)

10円:青銅(銅95%+亜鉛4%+スズ1-2%)

50円:白銅(銅75%+ニッケル25%)

100円:白銅(銅75%+ニッケル25%)

500円:ニッケル黄銅(銅72%+亜鉛20%+ニッケル8%)

1円玉だけが純アルミニウムで,他は全て合金です.合金はいずれも適度な硬さと展延性をもつ金属で加工がしやすい材質です.

各硬貨の材質的特徴

1円:純アルミニウム 他の硬貨に比べ柔らかい金属ですが,軽い(比重)のが特徴です.色は鈍いなので,50円,100円,500円に比べると光沢が無く,価値順位の表示に丁度良いと思えます(多くの人が光輝くものにより高い価値があると考えやすいため).

5円:真鍮=黄銅(銅60-70%+亜鉛30-40%) 銅60+亜鉛40を七三黄銅イエローブラス(黄色),銅70+亜鉛30を六四黄銅(金色)と呼び,色の違いがでてきます.5円硬貨はその中間を狙い,混合比のバラツキを多めにしてあります.美しい黄色の光沢があり,金の代用として昔から使われてきました.別名「貧者の金」と呼ばれていますが,加工性も良い優れた金属です.

10円:青銅(銅95%+亜鉛4%+スズ1-2%) いわゆるブロンズです.青銅器時代と呼ばれる5000年以上も昔から使われてきた金属です.

10円玉の青銅は銅がやや多く,いわゆる赤銅色で強度があります.スズの量が多くなると白銀色になり,脆くなります.

古代の銅鏡は青銅製で,色を白くするためにスズの量を多くしていました.また19世紀までの大砲は砲金(ガンメタル)と呼ばれる銅90%+錫10%程度の合金でした.後に製鉄技術の進歩で鉄製大砲が主流になりました.

尚,銅像の緑色は表面の酸化によるものです.鋳造当初は青銅本来の色ですが,年月とともに緑色になっていきます.

50円,100円:白銅(銅75%+ニッケル25%) 銅にニッケルを加えることで銀ににた白い輝きがあります.昭和30年代頃までの100円硬貨は銀貨でした.銀の価格が高騰したため現在の白銅に切り替えられました.

500円:ニッケル黄銅(銅72%+亜鉛20%+ニッケル8%) 洋白,洋銀とも呼ばれる優れた金属です.各金属成分は用途に応じて変えていきます.代表的なニッケル黄銅は銅55%+亜鉛27%+ニッケル18%ですが,500円玉はニッケル8%とニッケルを減らしています.

一般的に,Niが増えるとバネ性が上がり,Znが増えると強度が上がり,Cuが増と展延性が上がる様になりますので,500円硬貨の場合は展延性をあげて加工しやすくした意図が伺われます.

今日はこれまで.ではまた.