山河海空

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秋の味覚 キノコの王様 松茸のお話し

松茸

日本人でキノコの王様,松茸を知らない人はいないでは?というほどよく知られたキノコです.

でも,なぜあんなに高いのか,なぜ,あんなに人気があるのか?マツタケの人工栽培はできないのか?など疑問が多いキノコでもあります.

今日は松茸について見ていきましょう.

なぜ,あんなに高いのか?

松茸の流通量はわずか40トン程度(H26)です.生椎茸の67,000トンに比べると1,000倍以上の流通量です.値段が高い理由は流通量が需要に比べて圧倒的に少ないためです.

昭和初期においては6,000トンもありました.昭和初期の人口は約6,000万人でしたから,今の半分で生産量は100倍以上でしたので,一人あたりに換算すると,200-300倍もありました.これは国産品の松茸についてのみの計算です.

それにしても,なぜ,こんなに生産量が減ってしまったのでしょうか?理由の一つに松林の富栄養化があります.松茸は貧栄養状態の比較的乾燥した鉱質土層で成長します.現在の様に松林の葉や枝を燃料として使わなくなり,松林の土が葉や枝で富栄養化したり,水分が多くなるとできにくくなります.

現在では輸入品が多くなりました.ところが,主要輸入国の中国では残留農薬による不信感や北朝鮮からの輸入制限などにより,人気は国産品に集中し,国産品の価格は高いままとなっています.

なぜ,あんなに人気があるのか?

人気の理由の一つ目は歴史的な人気があります.日本では縄文時代からキノコは食用とされています.万葉集古今和歌集拾遺和歌集などにも松茸が詠われています.

江戸時代では一般大衆も食していたことが記録に残っています.このように松茸は古代から親しまれてきた食品なので伝統的な人気が残っています.

松茸は香りが良いとされています.「香り松茸,味しめじ」という言葉からわかるように松茸から香りを取ってしまうとほとんど何も残らなくなります.

この香りの主成分は解析されていて,「1-オクテン-3-オール (1-octene-3-ol)」,「trans-2-オクテン-1-オール (trans-2-octene-1-ol)」,「ケイ皮酸メチル (methyl cinnamate)」です.マツタケオールと呼ばれています.

このマツタケオールは合成されていて,市販されています.

人工栽培はできないのか?

松茸の香りは合成されて市販されていますが,松茸そのものの人工栽培は今のところできません.他のキノコに比べて菌糸の成長が遅く,多くのクリアすべき課題ありますが,人工栽培できない理由はありません.現状では研究レベルで,再現性,安定性にかけています.価格が高いままであり続ければ,開発ドライブがかかり,近い将来人工栽培も可能となることでしょう.

一方,松茸生産現場では生産量をあげる工夫で対処し,ある程度の効果をあげています. 1. 人為的に松林を貧栄養化させる. 2. 松茸胞子の散布 3. 発生促進剤の散布 などです.

マツタケのデータ

目:ハラタケ目 Agaricales 科:キシメジ科 Tricholomataceae 属:キシメジ属 Tricholoma (Fr.) Quel. 亜属:キシメジ亜属 Tricholoma 節:マツタケ節 Genuina 種:マツタケ T. matsutake 学名:Tricholoma matsutake (S. Ito et Imai) Sing. 和名:マツタケ

生育条件:アカマツの単相林.針葉樹が優占種となっている混合林など. 菌糸体の生育温度範囲は5-30℃,最適温度は22-25℃,最適pHは4.5-5.5.菌糸の成長速度は遅いです. 時期:8月末-11月末頃.

今日はこれまで.ではまた.