先日のもみぎり式火おこしで考えたことを整理してみました.もみぎり式火おこしというのは原始人が火を起こすときに両手の平に棒を挟んでくるくる回しながら板の上で回して摩擦熱で火を起こす方法です(本当にやっていたかは疑問ですが・・・).
実際にやってみると様々な条件があってなかなか難しい方法です.具体的な原理は以下の様になっています.
もみぎり式火おこしの手順
- 道具を用意します
棒:手で回転させるのにちょうど良い棒 板:棒を受ける板で棒の軸が定まる様に穴があけてある 火の粉(火種)を炎にする為のワタ:燃えやすく,かつ空気が供給されやすい繊維(ワタ)
棒を板と回転させてこすり合わせることで火種になる細かい木くずを発生させます.
更に回転させることで摩擦熱を発生させて火種に着火します.
火種は赤く燃えているが炎は出ていないので火を大きくするためにワタに火種を包んで空気を供給すると炎がでます.
ここでは,手順1-3までについて考察します.
1.道具の考察
標準的な手のひらで棒を回すと手のひらの中で約10㎝程の往復運動を回転運動に変換することになります.直径8mmだと4回転,直径30mmだと一回転くらいしか回りません.
棒が細ければ回転が多くなります.細すぎると滑りやすくて回しにくくなります.また,折れやすくなります.太すぎてもやはり回しにくくなります.
回転させるのに滑り難くい丁度良い太さの棒を選ぶことが大切です.人にもよりますが,直径8-20㎜位が手ごろではないでしょうか?
棒の長さですが,棒が短いと往復運動1-2回で手の位置が棒の下部間まで下がってきます.下まで下がると持ち替える必要があり,作業を止めると温度が下がってしまいますので,棒はある程度長い方が有利です.また,真っすぐで長い棒はなかなかありませんし,回しにくくなります.
板については,棒とこすり合わせた時摩擦熱が大きくなる素材が有利です.そして,発熱した熱が伝熱で逃げないように棒も板も熱抵抗の大きな素材が良いと考えられます.
2. 木くずの発生
一般に熱抵抗は空気を多く含む素材の方が大きいのですが,その分木の繊維がスカスカなので,削れやすくなります.すなわち削り粉が出やすくなります.
削り粉が出ないと火種ができませんのでこの点は重要です.ただし,棒の方が柔らかいと折れたり曲がったりしてしまいます.適度な硬さと太さが必要です.
そして,この木くずが無ければ摩擦熱が発火点以上になってもダメです.最初の数往復は火種の為の木くず出しを目的としてこすり合わせるべきだと思います.
従って,出だしはダッシュせず,木くずつくりの回転で余力を残しておくべきです.そして,十分に木くずが出てきたら全力を投入して発火点まで一気に持っていくのが良いとお思います.十分とは木くずの上部が棒のこすり合わせの部分に接触する位の量という事です.こすり合わせの部分=過熱部分と木くずが離れていたら点火しません.
3. 回転で熱を発生させる方法について
回転中の摩擦力は動摩擦の式で表せます.
F = μ ・ N
F :動摩擦力 μ :動摩擦係数 N :垂直抗力
この式が成り立つとすると,動摩擦は垂直抗力に比例しています.移動速度とは無関係です.つまり,いくら棒を速く回しても摩擦力は同じです.垂直抗力,つまり手で押し下げる力に比例します.
体重を載せて回せば回すほど摩擦熱が出るという事です.これは重要です.逆に体重(垂直抗力)をかけなければ,高速で回しても少ししか発熱しないという事です.
3. 発火の為の発熱分布について
発火に関して細かく見ていきましょう.温度が発火点に達した時点で発火します.加えているエネルギー量は時間に比例します(やり続けると疲れます)が,同時に熱は周囲に逃げていきます.熱の逃げる量も温度に比例します.
従って,発火点付近になると温度上昇させるのが難しくなります.ここで休んでしまうとまたやり直しになります.
ポイントは発火点に到達するのは局部的で良いという事です.つまり,摩擦で部分をなるべく小さくしてやることが大事です.そうすれば単位当たりの垂直抗力が大きくなるので部分的に高温になるということです.
具体的には先端を尖らせるか,棒の周囲が板の穴に棒の外周が線状に接触する様にして摩擦させるかのどちらかです.木は柔らかい素材なので,先端を尖らせても直ぐに丸くなるか折れてしまいます.
現実的には棒の外周と板の穴が線状に接する方式となります.その点でアジサイの枝やタケが理想的な棒になるわけです.内部が中空だと点接触になります.ちなみにタケはこすり合わせるのは「節」周辺の硬い部分を使います.
そして,受け側の穴もすり鉢状になっていて棒の直径とマッチしている必要があります.
まとめ
これまでの考察をまとめると以下の点が成功のポイントになります. 1. 棒は回しやすいもの.適当な長さ,硬さ,真っすぐなものであること.
以上です.上記の考察を基に練習をして次回は火おこしマイスターの称号を得たいと思います.
今日はこれまで.ではまた.